国際大ダム会議 第80回年次例会及び第24回大会 開催趣意書

 21世紀は「水の世紀」と呼ばれています。それは世界の人口が今後も増加し続ける一方で、水資源不足が深刻化し、衛生的な生活用水の確保や食糧生産、産業活動およびエネルギーを支える水の確保が困難になるとともに、生活圏の安全確保のための治水対策が重要な課題となるなど、地域間の水に関する利害関係が地域紛争の火種となりかねないことが予想されているからです。 一方、温室効果ガスの排出増大に伴う気候変動が確実視され、2007年に発表された第4次IPCC報告によれば、地球の温暖化にともなう異常渇水、異常降雨等の頻発化も予想されています。このため省エネルギーの推進や非化石エネルギー開発等温室効果ガスの排出抑制をはかるとともに、予想される気候変動に対する適応策の実施が緊急の課題となっています。

 このような状況の中、洪水時等の余剰の水を貯留し、水不足時に補給放流することにより水資源供給の増大及び安定化を図るとともに、水力発電によるクリーンなエネルギー開発を行うダム・貯水池の役割が改めて再認識されています。過去数千年にわたり人類が営々として建設・管理してきたダムの効用は、世界の歴史がそれを証明していると言えます。加えて発展途上国においては、大規模開発地点が数多く、エネルギー供給、水資源確保、治水対策等多くの期待がダムに寄せられており、その開発需要は高いものがあります。

 さて、国際大ダム会議は1928年に創設された民間国際団体(本部:パリ)であり、ダムの構造基準、管理基準等技術面で世界の指導的な役割を果たしてきており、現在95カ国が加盟しています。日本は国際大ダム会議に1931年に参加(1944年に第二次世界大戦により脱会、1953年再加盟)している最も古い加盟国の一つですが、我が国も1970年代頃までは国際大ダム会議及びその加盟国により開発された技術及び経験をもとに、ダム建設を行ってきたと言っても過言ではありません。現在の河川法河川管理施設等構造令に基づくダム技術基準の大宗も、国際大ダム会議の基準を踏まえたものです。 最近日本は貧配合のコンクリートをローラーで転圧し急速にダムを建設する工法(RCD工法)、ダムの堆砂を防ぐサンドバイパス工法、既存ダムのより有効な利用を図る嵩上げや機能追加技術あるいはダムサイト周辺の材料を有効に利用する台形CSGダム工法を開発、また水源地域対策やダムの建設・管理に関する環境保全対策などの面において、世界をリードする立場に立ちつつあります。

 こうした中で、去る2009年5月に開催された国際大ダム会議年次例会(ブラジリアで開催)において、2012年の国際大ダム会議第80回年次例会及び第24回大会(以下「2012年国際大ダム会議京都大会」という。)を我が国の京都において開催することが決定されました。日本国内においてはダムの開発可能地点は少なくなりつつあり、ダム建設に関する社会環境は厳しいものがあります。しかし世界的に見れば、水の世紀及び地球温暖化対策の観点から、ダムの建設・管理の重要性が再認識されつつある現在、年次例会とあわせて、3年に一度あらかじめテーマを設定し集中的に討議を行う大会を我が国において開催することは、日本の最新技術・知識を世界のダム関係者に広く知っていただくとともに、21世紀の水問題及び地球温暖化問題の解決に向け貢献する絶好の機会となると確信します。

 年次例会及び大会を開催する京都は、千年の古都として日本を代表する文化・観光都市です。会議場は国立京都国際会館であり、同会議場では1997年に気候変動に関する国際連合枠組条約国際会議京都会議(COP3)が、また2003年には第3回世界水フォーラムが開催されたことは記憶に新しいことです。 第80回年次例会及び第24回大会において、水の世紀の諸課題及び地球温暖化問題への最も有効な対応策の一つである「ダム」について、最新の技術・知識を共有する場を提供することは、上記二つの国際会議を主催し議論を主導してきた日本の責務でもあり、名誉でもあると考えます。

 なお国際大ダム会議の年次例会・大会は、従来9日間程度で開催されるのが通例ですが、最近の経済状況に鑑み、発展途上国等からもなるべく多くの参加国・参加者が可能となるように6~7日程度に短縮するなど、簡素かつ効率的な会議の準備・運営に努め、「2012年国際大ダム会議京都大会」を成功させたいと考えています。 組織委員会としては、「水の世紀の諸課題及び地球温暖化問題への対応」を中心課題とし、また、“Compact and Fruitful ICOLD 2012 with Warm Hospitality”「簡素で実り多きICOLD 2012年京都大会をあたたかい心で」を基本方針として、大会の実施・運営に努力する決意です。 関係者各位におかれましては、「2012年国際大ダム会議京都大会」の意義を御理解頂き、あたたかい御指導、御協力及び御支援を賜りますようお願い申し上げます。

国際大ダム会議第80回年次例会及び第24回大会
組 織 委 員 会